Column(2) 『Coyote』第53号より
文/松家仁之・写真/赤阪友昭
文/松家仁之・写真/赤阪友昭
シュマレフ唯一の学校は、クリフォードの家から徒歩1分のところにある。建物や教室のたたずまいを見ると、ここがまぎれもなくアメリカ合衆国に属していると感じる。素っ気ない明るさ。フラットで頑丈な感じ。
自分たちの「自由」と「権利」を確保し、おたがいの「尊厳」を認めあい、自分の「未来」を拓くために勉強する。目的の明解さ。
権威主義ではなく機能重視。そしてバスケットボール。本格的なスコアボードが設置された体育館は、バスケットボールのためだけにあるような雰囲気だった。
人口約600の3分の1に迫る生徒数に、20人近い教師がつく。生徒の出席率があがれば学校の基金が増資される仕組みになっている。学校への出席意識を高める取り組みは、具体的な数値目標をかかげ、親をも巻きこんで積極的に取り組まれているようだ。これもまた、アメリカ的明解さ。
島で唯一の学校、シシュマレフ・スクールでは200人近い生徒たちが学んでいる。昔は教育の対象外だった、伝統工芸品のつくりかたを学ぶ授業もある。毛皮を使ったスノーシューズや、セイウチの牙やクジラのヒゲをつかった工芸品など、作り方をゼロから教えている。