オーストラリア、メルボルン郊外にワイナリーを経営している共同監督で、脚本とプロデューサーも務めたワーウィック・ロスは、現在の投資目的の高級ワイン買いに警鐘を鳴らす。
「投資としてのワイン、ビジネスとしてのワインは、もはや避けられない状況だが、それによってますます値が上がり、さらにそれを手に入れようと躍起になる投資家が現れる始末だ。これはクレイジーとしか言いようがない状況だと思う。一部の中国人投資家たちは、買っておきながら箱を開けることもまったくせず、ラベルを見ることさえない。彼らの中にはワインをひとくちも飲まない人もいるほどだ」
2010年、ボルドー・ワインの価格は「市場最高値」を記録。それは、それ以前の最高値だった前年の、実に4割り増しというクレイジーな価格だった。新興国と呼ばれる中国のマネーが、ボルドー・ワインの世界を席巻したからだ。たとえば、この映画の中に登場するひとりの超富裕層の中国人女性、ワイン収集家でもあるケリー・チャン氏は、こう語っている。
「あるときオークションで、とてもレアなボルドーが出たの。誰もが欲しくて、どんどん値が上がっていったわ。そして、ついに70万ドルに達したとき、私はさっと手をあげて、『150万ドル』と言ったわ(笑)。それくらいレアなものなのよ。でも、呑まないかもしれないけれど」
いったいこれは、どういうことなのか? 飲まれないで収集されるだけのワインに、いったい何の価値があるのか。かつてバブルの時代、日本の大手企業のトップたちが、ゴッホなど世界の名画をとてつもない金額で買うというような出来事があった。その絵が、高い値で買われたとしてそのまま誰かの家の倉庫にしまわれたままだとしたら、と考えてしまう。どんなにすばらしい絵であっても、人に見られなければ……。
この映画は、「すべてを買い占めよう」という中国人コレクターと、価格高騰に揺れるボルドーのワイナリーやシャトーにカメラを向けていく。